魚の保存温度とヒスタミン生成量
 魚類に含まれたヒスタミンが原因となって起こる食中毒があります。赤身魚や加工品を食べた後、顔の紅潮、じんましん、頭痛、吐き気などの症状が現れ、多くは数時間で回復しますが、重症の場合、呼吸困難や意識不明になることもあります。そこで、生魚と干物について、保存温度の違いによるヒスタミン生成量の変化をみてみました。
 
保存温度と解凍温度を変えてテスト
  原因となるヒスタミンは魚肉(特に赤身魚)中に含まれるヒスチジンが細菌などによって分解されて生成されます。魚の鮮度が落ちればヒスタミン生成が進むことから、サバ(生魚)とアジの一夜干しについて、保存温度や解凍温度を変えて、生成されるヒスタミンの濃度を測定しました。(実施時期:平成18年12月〜平成19年2月)
 
冷蔵保存は1週間以内に消費を
   30℃で保存した場合、24時間後のヒスタミン濃度は、生魚が約3,500mg/s、一夜干しは約500 mg/sで、食中毒発症例のある約500 mg/kgを上回りました。20℃保存では生魚、一夜干しともに48時間後に30℃保存と同様の高濃度になりました。夏場は当然のことですが、冬場も、常温保存は避けた方がいいでしょう。
表 20℃、30℃保存でのヒスタミン濃度の変化(mg/kg)
保存日数 0時間 24時間後 48時間後
生魚平均(20℃保存) 検出限界以下 59 3333
一夜干し平均(20℃保存) 検出限界以下 検出限界以下 517
生魚平均(30℃保存) 検出限界以下 3467 3500
一夜干し平均(30℃保存) 検出限界以下 500 607
 
 4℃保存では、保存開始後1週間以降2週間でヒスタミン濃度は急激に増加(生魚1週間:81 mg/s、2週間:2,467 mg/s、一夜干し1週間:検出限界以下、2週間:173 mg/s(図1))しました。4℃保存での冷蔵の場合、1週間以内であればヒスタミン生成は抑制されています。なお、マイナス20℃保存では、2週間保存後も検出限界以下でした。
グラフ
図  4℃での保存とヒスタミン生成量
冷凍した物の解凍は冷蔵で
   一度冷凍した後、4℃と20℃で解凍を実施しヒスタミン濃度を測定しました。4℃解凍では24時間後のヒスタミンは検出限界以下でしたが、20℃で解凍した場合、生魚で約100 mg/kg、一夜干しで20 mg/kgのヒスタミンが検出されました。解凍する場合、常温解凍は避け、冷蔵庫内での解凍がヒスタミン生成を抑制します。
ヒスタミン型食中毒を防ぐ魚の保存ポイント

@ ヒスタミンは加熱処理しても減少せず。
 一旦蓄積したヒスタミンは、過熱調理しても分解されません。ヒスタミンを蓄積させない保
 存方 法をとることが重要です。

A 常温に放置せず、冷蔵又は冷凍保存。
 生魚、一夜干し共に購入後、早く冷蔵庫に入れ、冷蔵保存では1週間以内に消費しましょ
 う。

B 冷凍保存がヒスタミン生成抑制には効果的。
 冷解凍の繰り返しは避けましょう。

C 唇や舌先に刺激を感じたら要注意。
 ヒスタミンを多く含んだ食品を食したときは刺激を感じることがあるといわれています。

D 白身魚も赤身魚同様に保存に注意。
 ヒスタミン型食中毒は白身魚から発症するケースも稀にあります。